TNFD提言に基づく情報開示

近年、自然資本・生物多様性の損失がグローバルリスクとして急速にその注目度を高めており、ネイチャーポジティブ※1への転換は急務となっています。製品製造の過程で様々な化学物質を使用する当社グループにおいても、その環境負荷は決して軽視できないものと認識しており、以前より自然資本・生物多様性に関する課題を重要なマテリアリティの一つとして取り組みを進めてきました。

また、創業以来磨いてきた素材開発力や流体制御ソリューションは、ネイチャーポジティブに向かう社会ニーズにも貢献できるものと考えており、当社グループによる環境インパクトの低減と併せて、これらの技術力を活かした新たな事業機会の創出は重要な事業戦略の一つとなっています。

こうした背景から、自然関連の依存・インパクト・リスク・機会 (以下、「自然関連課題」といいます)の分析・評価を行いました。以下では、その結果を踏まえて、「自然関連財務情報開示タスクフォースの提言(以下、TNFD提言)」に基づき、当社グループのガバナンス、リスク・インパクト管理、戦略、指標と目標について開示します。今後は、これらを通じてステークホルダーの皆様との対話を深め、ネイチャーポジティブの実現に向けた取り組みを推進してまいります。

※1:「ネイチャーポジティブ」とは、生物多様性の損失を止めて、回復に転じさせることを指します。2022年の昆明・モントリオール生物多様性枠組みでは、2030年までにネイチャーポジティブを実現させることがミッションとして掲げられています。

ガバナンス


■自然資本・生物多様性に関する取り組みの位置づけ

当社グループでは、自然資本・生物多様性保全を重要な社会課題の一つとして認識し、以前より「化学物質による汚染防止と水資源保全」、「生物多様性の保全」をマテリアリティとして掲げ着実に取り組みを進めてまいりました。

2025年度からは、TNFD提言の考え方に基づき、自然関連課題の特定及び評価を進めています。今後はその結果を踏まえ、リスクへの対応及びネイチャーポジティブへの取り組みをさらに強化していく予定です。



■ガバナンス体制


当社グループでは気候変動や自然関連課題を含む各種サステナビリティに関連する委員会の上位組織として「ESG/SDGs推進委員会」を設置しており、気候変動や自然関連課題に関しては、下部組織の「脱炭素・地球環境委員会」において策定された基本方針や目標設定の審議、目標達成に向けた進捗状況のモニタリングなどを行っております。


取締役会の監督責任

取締役会は、自然関連課題を重要な経営課題と位置づけ、以下の監督責任を担っています。

  • • 自然関連課題に関する戦略と目標の最終承認
  • • 自然関連課題の監視・監督
  • • 自然関連の指標・目標の進捗状況の定期的レビュー

ESG/SDGs推進委員会

「ESG/SDGs推進委員会」では代表取締役社長が委員長を務めており、自然関連課題においても、代表取締役社長が最高責任と権限を有しております。委員会メンバーは、サステナビリティに関連する委員会の委員長と主要コーポレート部門の責任者で構成され、全社的な視点による自然関連課題への対応を可能にしています。委員会は原則として四半期ごとに開催され、審議内容は定期的に取締役会に報告されます。


同委員会は自然関連課題に関する以下の役割を担っています。

  • • 自然関連課題を含むサステナビリティ戦略の策定と推進
  • • 自然関連課題の管理状況のモニタリング
  • • 自然関連の目標の設定と進捗モニタリング
  • • 自然関連課題への対応に関する全社的な意思決定 等

脱炭素・地球環境委員会

「脱炭素・地球環境委員会」は、常務執行役員を委員長とし、各事業部門で構成されています。同委員会は以下の責務を負っています。

  • • 自然関連課題に関する目標設定
  • • 自然関連データの収集・分析・評価
  • • 各事業部門における自然関連課題への対応の推進と調整
  • • 自然関連課題の特定と対応策の検討

同委員会は四半期ごとに開催され、その活動内容と進捗状況は「ESG/SDGs推進委員会」に報告されます。


■地域社会やステークホルダーへの対応体制


自然資本・生物多様性の保全において地域社会の存在は切り離せないものであり、自然関連課題を確実に特定し、評価、管理するには地域社会との協力体制をこれまで以上に強固なものにする必要があると認識しています。そこで、地域社会をはじめとするステークホルダーとともに自然保全に向けたエンゲージメントを強化していく方針です。 また、TNFDが重視する自然と人権の関連性を踏まえ、当社グループの拠点所在地の地域社会やそこに根付く文化・産業が自然の恩恵を受け続けられるよう、グループ人権方針に則った体制整備を進めていきます。

リスク・インパクト管理


■リスク・インパクト管理体制


当社グループの自然関連のリスク・インパクトの管理は、「脱炭素・地球環境委員会」を中心に、後述する優先地域として特定した拠点と連携して実施しています。同委員会は、自然関連課題の特定、評価、優先地域によるモニタリング結果のとりまとめを担当し、四半期ごとに「ESG/SDGs推進委員会」に報告を行っています。 リスク管理の全体統括は「リスクマネジメント委員会」が行い、自然関連のリスクを含む全社的なリスク管理の仕組みを構築・運用しています。両委員会及び対象拠点は密接に連携し、自然関連の課題に対する実効性向上を図っています。


リスクマネジメント委員会

「リスクマネジメント委員会」は、執行役員を委員長とし、各事業部門長で構成されています。同委員会はリスクマネジメントの強化を推進するため、以下の責務を負っています。

  • • 定期的な重要リスクの抽出・分析・評価及びリスク対策の策定
  • • 定期的なリスク対策の見直し、是正処置の検討
  • • 重要リスクの顕在化に伴う対策、再発防止策などの検討
  • • 取締役会への報告

同委員会は年4回開催され、気候関連のリスク管理と進捗状況を含めて「ESG/SDGs推進委員会」に報告されます。


■依存・インパクト・リスク・機会の識別・評価・管理プロセス


識別・評価プロセス

当社グループでは、「脱炭素・地球環境委員会」の主導の下、重要な自然関連課題の識別・評価までの一連のプロセスを最低年1回実施しています。


識別・評価においては、TNFDが推奨するLEAPアプローチを活用しています。以下で開示している内容においては、当社グループが直接操業する範囲についての評価を行いましたが、今後は分析範囲の拡大も検討してまいります。


また、本プロセスの中で、当社グループではマテリアルなインパクト要因を後述の通り「水と土壌への有毒汚染物質の排出」と特定し、拠点レベルにおける評価(Evaluate)では、これに焦点を当てて分析を行いました。

LEAPアプローチによる評価プロセス

リスク・機会のモニタリング

特定された重要な自然関連のリスク・機会は、適時、対象拠点において、本ページ下部の「指標と目標」項目に掲載するKPIを基にモニタリングし、「脱炭素・地球環境委員会」がとりまとめを行っています。モニタリング結果は、四半期ごとに「ESG/SDGs推進委員会」に報告され、必要に応じて対応策の見直しを行っています。


全社的リスク管理プロセスとの統合

「リスクマネジメント委員会」と「脱炭素・地球環境委員会」が連携・協議の上、特定された重要な自然関連リスク・機会は全社リスク管理プロセスに統合されます。自然関連の重要リスクは全社リスクマップに組み込まれ、リスク対応策は中期経営計画や年度事業計画に反映されます。「ESG/SDGs推進委員会」への定期報告を通じて、全社的なサステナビリティ戦略との整合性を確保しています。

TNFD推進体制

戦略


当社グループでは、上記の「リスク・インパクト管理」の仕組み・プロセスの下、特定した重要な自然関連課題について、その分析と対応を強化し、関連情報の開示拡充を進めています。


■依存・インパクト


当社グループでは、事業による自然への依存・インパクトを整理し下表の通り把握しています。なお、本表は、電子機器関連事業及び産業機器関連事業のそれぞれについて、当社グループの事業活動(直接操業)による依存・インパクト、並びに当社グループと直接取引関係にある一次サプライヤー(上流)及び直接顧客(下流)の事業活動による依存・インパクトを、Global CanopyやUNEP FIらによる開発ツール「ENCORE(Exploring Natural Capital Opportunities, Risks and Exposure)」を用いて分析したものです。


分析の結果、両事業において「水と土壌への有毒汚染物質の排出」によるインパクトが直接操業、上流、下流ともに重要であることが分かりました。


【当社グループ事業の依存・インパクト状況】
自然への依存・インパクト分析結果

※各生態系サービスへの依存度およびインパクト要因の重要度を、VH(Very High)、H(High)、M(Medium)、L(Low)、VL(Very Low)の5段階で評価しています。「-」表記は事業と関連性がない、もしくは評価するためのデータがないことを示します。


■重要なリスク・機会の特定


自然関連の依存・インパクトの分析結果を踏まえて、当社グループでは重要なリスク・機会を下表のように評価・特定しています。


評価・特定においては、TNFDが提唱する自然関連シナリオを参考に、物理リスクについては「生態系サービスの劣化が急速に進む世界」、移行リスクについては「生態系サービスの保全に向けた政策・規制・市場の変化が急速に進む世界」の2つのシナリオを設定し、これらのシナリオから考えられるリスク・機会を整理し、「発生可能性」「影響度」から重要と評価されたものを抽出しました。時間軸については、短期(3年以内)、中期(3年超10年以内)、長期(10年超)と定義しています。

【当社グループにおける重要な自然関連リスク】

重要な自然関連リスク

【当社グループにおける重要な自然関連機会】

重要な自然関連機会

■当社グループ製品の自然環境への貢献

当社グループの製品は、その素材特性を活かして有害物質の漏洩防止や資源使用量の削減に貢献するものが多く、上記の機会「製品とサービス」の具体的な内容として以下に整理しています。これらの製品・技術は、バリューチェーン全体における自然へのインパクト低減に資するものであり、ネイチャーポジティブに向かう社会ニーズへの対応としても重要な事業機会と捉えています。


【当社グループ製品の自然環境への貢献内容】

自然環境への貢献内容

■優先地域の特定及び状況


自然関連課題を重点的にモニタリングし先行して対応策を講じる当社グループ生産拠点を「優先地域」として3拠点特定しました。


特定においては、各拠点地域の自然環境の脆弱性(センシティブロケーション)のほか、事業やインパクトへのマテリアリティ(マテリアルロケーション)の両面から検討を行いました。センシティブロケーションの分析結果としては、水リスクがやや高い拠点(7拠点)が見られたほか、近隣に保護区等が所在する拠点も見られましたが、事業やインパクトのマテリアリティの大きさを考慮し、当面の優先地域としては特に化学物質等の有毒汚染物質の使用量が多い国内3拠点(三田工場、福知山事業所、九州工場)を特定しました。今後は、これらの優先地域におけるモニタリングを継続し対応策を進めるとともに、センシティブロケーションの観点からの対応も視野に入れ取り組みを進めてまいります。(各拠点の所在地等はグループネットワークをご参照ください。)


三田工場

主にメカニカルシール、グランドパッキン、ガスケットなど産業機器関連市場向けの生産を担うマザー工場の一つです。所在地である兵庫県三田市は、製造業を中心とした工業が盛んであると同時に、市域の20%を農地が占める自然豊かな地域でもあります。1999年9月にISO14001認証を取得し、過去より製品のノンアスベスト化や鉛などのPRTR制度特定第一種指定化学物質の削減を行ってまいりました。2020年3月にはリニューアル工事を実施しています。さらに、地域の自然環境や地域産業である農業へのインパクト低減に向けて境界付近の樹木剪定や近隣の清掃活動なども実施しています。


福知山事業所

主に電子機器関連事業にあたる半導体・液晶製造装置向けの継手やポンプといったピラフロン製品の生産を担い、今後も増強を計画する当社グループの主力工場です。近隣にはサケが遡上する清流として知られる由良川が流れています。ISO14001認証を2002年9月に第1工場、2024年8月に第2工場にて取得しており、第2工場ではCASBEE「S」ランクを取得しています。 また、当事業所は化学物質の使用量が地域の中でも多く、「水や土壌への有毒汚染物質の排出」に関して潜在的リスクを有することから、製造工程の一部において有機溶媒を使用しない洗浄方法への切り替えを進めています。


九州工場

電子機器関連事業にあたる半導体・液晶製造装置向けの継手やチューブの生産を担っています。九州工場は豊かな田園地帯にあり、合志川流域内には日本固有種であるチスジノリの発生地として国の天然記念物に指定された区間があります。九州工場においても福知山事業所と同様、製造工程の一部において有機溶媒を使用しない洗浄方法への切り替えを進めています。


■依存・インパクト・リスク・機会を踏まえた事業戦略


当社グループの事業活動と自然との依存・インパクト関係、及びそこから生じるリスク・機会を下図のように整理しています。有毒汚染物質の漏洩事故等が発生すれば、地域の水質・土壌汚染を通じて農業等の地域産業への影響が特に大きくなり得るとともに、当社グループにとってもコスト増・操業停止・売上減といった事業上のリスクが顕在化します。一方で、こうした自然関連課題への対応を通じて環境貢献型製品の開発・拡販が進めば、新市場の拡大や競争優位性の向上といった機会にもつながります。こうした認識のもと、インパクト低減・回避に向けた取り組みを進めるとともに、自然関連課題を踏まえた機会創出を事業戦略に組み込み、以下の取り組みを推進してまいります。


【インパクト低減・機会創出に向けた主な取り組み】

  • • 環境貢献型製品の開発・販売
  • • PRTR制度指定化学物質の使用削減
  • • 環境負荷の少ない原材料への切り替え推進
  • • 生産工程における水使用量の削減
  • • 主要拠点のBCP強化
  • • サプライヤーとのエンゲージメント強化
組織図

指標と目標


当社グループでは、特定した自然関連課題を管理するために、TNFDが提示するグローバル中核開示指標を参考に、下記の各指標をモニタリング指標としています。今後は、指標の拡充を図りながら、達成状況を管理してまいります。


TNFD測定指標番号
実績数値についてはサステナビリティ・データ集をご参照ください。 >> サステナビリティ・データ集

サステナビリティ

グループネットワーク

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